中国の化粧品法規の改正について解説。変更点や影響の有無は?

  • 2021.02.22
中国 化粧品 法改正

中国市場での化粧品ビジネスを検討されている方向けに、中国における化粧品・コスメ市場について、シリーズで解説します。今回は、中国における化粧品・コスメ市場の現状と可能性を前提知識としてご紹介し、1990年以来となる中国の化粧品法規の大改正をメインで取り上げます。

目次
1.中国の化粧品・コスメ市場について
1-1.これまでと現状
1-2.今後の展望と可能性
2.今回の「中国 化粧品法規改正」について
2-1.概要
2-2.特筆事項:「特殊化粧品」の規定改正
2-3.「特殊化粧品」の規定変更による影響
3.今回の化粧品法規改正を踏まえて
3-1.「敵を知り、己を知れば、百戦して殆うからず」
4.まとめ

中国の化粧品・コスメ市場について

これまでと現状

これを読まれている方は程度の差はあれ、中国での化粧品ビジネスに関心をお持ちだと思います。新型コロナウイルス感染拡大以降はそれまでのようにはいかないものの、中国に行かれた経験のある方も多いのではないでしょうか。中国の化粧品業界は、“桁違いの規模感”“圧倒的なスピード”そして“おびただしい数量”を伴って迫りくる強烈なエネルギーや、“明日は今日より良くなる”という強い自信に溢れた雰囲気に満ちています。

中国が世界第2位の化粧品市場規模となったのは、2013年前後と言われていますが、その後も飛躍的な拡大が止まりません。中国国家統計局の発表によると、2018年の化粧品小売総額は前年比4.2%増の2,619億元(約4兆2,690億円、1元=16.3円/2021年2月1日)。2018年の日本の化粧品出荷額が1兆6,941億円と報告されていることから、中国はすでに日本の約2.5倍の市場規模となっています。

今後の展望と可能性

そして何より重要なことは、中国市場はまだ発展段階であり、さらなる拡大余地が見込まれる有望市場であることです。そのように判断できる根拠として、以下のような要素が挙げられています。

  • 一人当たり消費額で見ると日本の数分の1程度にしか過ぎず、若年層の消費拡大、地方都市の消費額伸長等により、市場規模の拡大が期待できる。
  • これまでの売れ筋はスキンケア製品であったが、若年層を中心としたメーキャップの習慣の広がりとともにメーキャップ製品が売上伸長してきている。
  • 都市部のホワイトカラーを中心に、男性のスキンケア意識が高まりつつある。
  • 収入の増大の伴い、高価格帯マーケティングの需要が拡大している。

このように、中国市場は今なお大変魅力的であるため、多くの日系企業が進出しており、どのような商品をどのように販売するかについて様々な工夫が凝らされています。
ところが、中国市場に挑戦するすべての企業が、必ずしもバラ色の結果にはなっている訳ではないようです。その理由の考察については別の場でご確認いただくとして、続いてはタイトルにも記載した中国の化粧品法規の改正について解説します。

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今回の「中国 化粧品法規改正」について

化粧品法規改正の概要

2021年1月1日、中国化粧品領域の最上位の法規である《化粧品監督管理条例》(以下、《新条例》)が施行されました。これまで最上位であった法規は1990年1月1日施行の《化粧品衛生監督条例》であり、実に31年振りの改正です。しかも今回は単なる最上位法規の改正にとどまらず、2020年12月15日の時点で17の下位法と7つの試験法についての意見募集稿が発布され、「化粧品法規の“総取り換え”」と呼べるような様相を呈しています。

特筆事項:「特殊化粧品」の規定改正

中国での化粧品ビジネスに関心がある方であれば「特殊化粧品/特殊用途化粧品」という言葉を耳にしたことがあると思います。そして、それは「日本の『医薬部外品』によく似ている」と言われてきました。ところが、今回の「中国化粧品法規の“総取り換え”」の中で、“特殊化粧品”の規定が大きく変わりました。

《新条例》の第16条では、ヘアカラー製品、パーマ製品、シミ取り・美白製品、日焼け止め製品、抜け毛防止製品および新効能を訴求する製品は、“特殊化粧品”として管理されると規定されました。日焼け止め製品と新効能を訴求する製品以外は日本では医薬部外品として管理されていることもあり「特殊化粧品は医薬部外品と似ている」との認識が広まったのではと推察しますが、「中国の特殊化粧品は日本の医薬部外品とは似ているが違うもの」と認識した方が安全です。

例えば《新条例》第4条に「国家は、リスクのレベルに応じて化粧品を分類し管理する。化粧品は特殊化粧品と普通化粧品に分けられる。国家は特殊化粧品に対して申請/承認管理を行い、普通化粧品に対して届出管理を行う。」と規定されています。すなわち“特殊化粧品”とは、“普通化粧品”よりも安全性上のリスクが高く、より一段厳しい管理が必要な化粧品として管理されていることがわかります。

もう一つ注目すべきは、《新条例》第6条で「化粧品申請者/届出者は、化粧品の品質安全性と効能訴求に対して責任を負う」と規定されていることです。中国国家は、安全性リスクに対しては注目し法規で規定しているのに対し、効能訴求に対しては企業責任としている、少し極端な言い方をすると「効能訴求については、安全性リスク程、重視していない」ということになります。

「特殊化粧品」の規定変更による影響

上記のような「特殊化粧品」に関する規定が変更になったことによって、具体的にどのような状況が生じているのでしょうか。美白化粧品を例として見ていきましょう。

日本の「医薬部外品」の場合、「原料規格で規定されたその製品固有の有効成分が、国が承認したある一定量配合」されています。そしてこの原則が維持されている限り、前例をもって承認を受けることができます。一方、中国の「特殊化粧品」の場合は「企業が任意に選定した有効成分を、任意の量配合」することが可能です。

ただ、「中国で規定された美白効能試験法で評価され、その製品は有効であるというレポートを得なくてはいけない」という中国ならではの規制があります。それさえクリアすれば任意の成分量で、美白製品として上市することができます。詳しくは次の記事②中国向け商品のパッケージ上で訴求できること、できないことで詳しく説明します。

改めて、「中国の『特殊化粧品』は、日本の『医薬部外品』と似た側面がないわけではないけれども、基本的に別物である」との認識を持つことを、お勧めします。

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今回の化粧品法規改正を踏まえて

「敵を知り、己を知れば、百戦して殆うからず」

これは、孫子の言葉の中でも最も有名な教訓の一つです。孫子は、戦いの際に「敵情を知ること」と、「客観的に自分を知ること」が大切であると説いています。これは、御社の製品をより早く、より確実に上市させることにとっても、良くあてはまります。

「敵情を知ること」とは、中国化粧品市場を取り巻く環境や御社の商品を薬事登録するために必要な要件を把握すること。「客観的に自分を知ること」とは、御社の商品の内容を把握することです。その上で薬事申請等の手続きを行なえば、的確な薬事登録が可能となります。

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まとめ

今回は、中国における化粧品・コスメ市場の基礎知識と1990年以来となる中国の化粧品法規の大改正についてご紹介しました。特筆事項として「特殊化粧品」をピックアップし、《新条例》での言及内容を解説しましたので、中国市場での化粧品・コスメビジネスの展開を検討されている方はご参考ください。

以下、
②中国向け商品のパッケージ上で訴求できること、できないこと
③一般貿易と越境EC貿易の違い
と順次、中国の化粧品薬事についてご紹介します。再見!

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※1:日本製薬団体連合会ホームページ、医薬品等承認情報に基づき集計。調査期間:2016年1月1日~12月31日(当社調べ)
※2:消費者庁2024年8月15日発表情報より作成【許可取得実績数300件】
※3:消費者庁公開情報の製造受託を主たる業務とする企業の届出情報を基に、届出件数、独自エビデンス数を抽出・集計。(2024年5月31日時点、自社調べ)

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